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【資料名】 高冠瑞(1994):釜山の発展と日韓トンネル,都市発展研究所第4回研究会における発表の要約 , 理想建築94年10月号 , PP.48-.49 , 1994.10. 

釜山の発展と韓日トンネル

都市発展研究所 第4回研究会における発表の要約
高冠瑞博士(釜山水産大学名誉教授)




 玄界灘に250Kmの韓日海底トンネルが掘られる。
国際ハイウェイ建設事業の一環として進められている韓日海底トンネル事業は、すでに日本側の起点に本トンネル掘削のための調査トンネルを海水面下まで掘り進められた状態にある。韓国側でも陸上部の地質調査を終了した状態にある。
 韓国の慶尚南道の巨済と唐津を結ぶ総延長250Kmの海底トンネルを、遅くとも西暦2000年までには着工、2015年までには完工させる計画の韓日海底トンネル研究会は、去る86年10月から地質探査、環境影響評価など、事前研究調査活動を繰り広げて来た。
 釜山・慶尚南道の加徳島新港湾建設、ヨン・ホナムを包含する新国際空港建設、釜山国際総合展示場(KOEX)建立などの開発案が浮かび上がっている昨今、韓日トンネルに関し長い間研究活動を繰り広げて来た高冠瑞博士の発表内容を通じ、韓日トンネルと釜山の発展の展望について話を聞いてみることにする。
 高冠瑞博士は前釜山水産大学漁業学科教授と大学院長などを経て、現在国際ハイウェイ研究会の部会長および釜山支部長、統一文化研究院長を歴任している。
 以下は、去る8月30日、釜山の都市発展研究所(所長:クォン チョルヒョン) の主催で開かれた第4回研究会で、高冠瑞博士が釜山の発展と韓日トンネルに関して講演した内容を整理し要約したものである。(編集者注)

1.釜山の発展計画
 国土開発研究院で、建設部の承認(1992年)を受けた釜山の総合計画構想図を見ると、おおよそ5点に要約される。それは、1.現在は保留になっているが海上新都市造成、2.ミョンジ・ノクサンおよび加徳地区の開発、3.カラクランド建設、4.新国際空港の建設、5.
自然生態保存地区の造成とこれに関連した道路網などである。
 この発展計画は必要な事項であり実現されなければならないが、いくつかつけ加えておかなければならないことがある。最近、事あるごとに国際化、地球村などといった言葉が多く語られるが、実際に未来を見通しての計画は不十分ではないかという思いがする。世界のどの国に行ってみても大都市は川を抱いて発展しており、その都市は川をはさんで両側に発展したのが一般的である。ところで釜山はただ一方向だけが発展しており、川のもう一方向は全く開発されなかった。歳月はこの状態で釜山を放置しておくかもしれない。しかし10年、20年後を見通すとその青写真が浮かびあがってくる。
 21世紀の釜山は、理念と国家の障壁を越えた巨大な国際都市へと成長せざるをえない。そのため一つの都市がこれまでの国家であり地域(地方自治体)であるという空間概念が展開しなければならない。あたかもアメリカのボストンからニューヨークを経てフィラデルフィアへと続くアメリカのメガロポリスであるとか、日本の東京~名古屋~大阪~神戸を結ぶ新巨大都市に見るような環太平洋時代の国際海洋都市のように、釜山は蔚山~馬山~昌原~鎮海~巨済島を結ぶオリエントメガロポリスとなる。そして現在の行政区域体制に固執できなくなり、周辺の都市は巨大な地域都市への成長した釜山と調和をなすようその都市の特性を生かした役割分担がなされなければならないのである。
 また、釜山の位置は、日本の下関~福岡~長崎を結ぶ巨大な海洋都市と調和し、さらに世界の中心都市として成長するのである。従って製造業、サービス業、居住地域が混在する現在の都市機能から思いきって脱皮し、情報、通信、金融、尖端技術および24時間サービス体制を持つ国際交易機能とテレポートを新たに造成、育成しなければならないのである。加徳島の新国際空港は単なる国際空港ではなく、宇宙往復船(スペースシャトル)の離着陸を兼ねる国際空港となるよう規模を広範囲に準備し、アメリカやヨーロッパからやって来た人々がいったん釜山に降り、そこから東京にも行き、北京にも行けるようにすれば釜山は世界の中心にならざるを得ないであろう。
 そればかりでなく、いま盛んに進められている韓日トンネルが完成すれば、国際ハイウェイと結ばれる巨済島の位置も考慮しておかねばならないだろう。大韓海峡(対馬海峡)を30分で走破することになれば日本の福岡も決して遠い距離ではない。
 いろいろな施設と技術はさておき、宇宙往復船の離着陸地が釜山になったとすれば、施設と投資は自動的に付いて来るものであって、結局あらゆる問題が自ら解決されると思われる。地域の特性上、現在の半分ほどしか受け入れることのできない港湾施設の拡充も重要であるが、水産物の生産、輸出、加工、漁船数など水産業のあらゆる面で全国のほぼ半分以上が釜山で占められており、未来の食料資源を海洋から得るためにも、水産、海洋の総合的な開発都市としてのマリノピア計画も軽んじられない。多くの人々が国際化、都市化、情報化、宇宙化を論ずれば新しい時代が開かれるという。この言葉は未来の釜山は巨大都市に発展し、その巨大都市にふさわしい尖端技術工場団地(テクノタウン)、情報都市(テレポート)、国際交易団地、金融団地、休養地といったようなもの全てを結び合わせ、移動させる交通(港湾、空港)手段が調和と均衡をなし、あたかも五臓六腑が互いに協力しあって健康な人体を形成するように、総合的な企画と建設が必要であるという意味である。言い換えれば、まず知ること(情報)、作ること(技術)、売ること(流通)、であり、自分だけでなく全人類が共存、共生、共栄の道を開こうとするものである。それは哲学と価値観と生活構造と意識構造が変わることを意味する。そしていろいろな分野に波及する革命を伴う。そして苦しく、辛く、手に余るものである。それをより真実で美しい創造を造り出す方向へと導くために、君と僕と彼らを一つに結ぶ我ら全員の涙ぐましい努力が必要である。古い時代が去り、新しい時代が訪れるということは一つの大きな転換期である。転換期とはその性質上多くの工夫と調査が必要となる。問題が多岐にわたり発生するからである。
 しかしながらその困難を耐えてゆけば、偉大な発展の結実を収穫するようになることは
事実である。



2.韓日トンネルの建設

基本理念
 21世紀の新たな文明社会を創造するためには、各国が国益の追求を止め、グローバルな価値観を確立しなければならない。自分勝手な国益の追求は敵意と闘争だけをもたらすのみである。隣国との平和と幸福なしに自国の幸福と平和を維持することは困難であることは周知の事実である。
 人類一家族という理想を実現する方向性のもと、東洋と西洋の諸国を結ぶのが国際ハイウェイ構想である。
 第1段階として韓国、日本、中国、中近東を通過し、ソ連およびヨーロッパに至る道を形成し、世界の全ての国と直接結びつけようというものである。このハイウェイの両側少なくとも1Kmの地帯には中立の緩衝地帯を設け、国境を超越した地域とし、高速乗用車
や観光バスを利用するための宿泊と娯楽施設を建設することになるのである。この提案は未来の理想世界を実現するための具体的な計画の一部である。このような目的のもと、すでに壱岐、対馬、唐津などで海洋と陸地での地形と地質の調査を終え、韓国でもトンネルを掘るため韓国の研究者らと討論している。

組織と運営
 国際ハイウェイ研究会の組織は4つの部会からなりたっている。
第1部会は理念、文化、法律、経済などを担当し、
第2部会は地形、地質、水理など
第3部会は路線、設計、施工など
第4部会は環境、気象、海象などの分野を担当する。

 これ以外に、1.車両および情報収集、整備事業、2.調査、研究による韓日トンネル建設に関する提言、3.韓日トンネルの計画推進に関する広報活動、4.その他、研究会の目的を達成するために必要な事業、などである。

韓日トンネル計画と推進方式
 韓国と日本を結ぶトンネルは総延長235Kmを越す長大なトンネルである。始発点である唐津から壱岐島までが27Km、壱岐島自体が18Km、対馬の横断する距離が23Km、大韓海峡が68Km、巨済島が30Km、巨済島から釜山方面までが7Kmとすれば約220Kmであるが、直線距離ではなく地質学的な側面と断層などを考慮して総延長距離を計算すると約250Kmに達する。また単純にルートを橋梁とした場合、トンネルよりも2~3倍の経費が余分にかかるが、橋梁が景観的側面で美しく名所としての経済的発展を期待できることから両側の部分は橋梁の可能性もある。
 一方、トンネルの形態も走行方式の選択により大きく変化することになる。このトンネルは国際ハイウェイの一部であることから自動車が直接走ることが望ましいが、最大の問題は換気の問題である。トンネルが長く海底にあるため実現性は少ない。

 1)電気自動車もあるが一度充電して走れる距離が50~100Kmであり、電池の再充電または交換が必要であることから実現性は小さい。しかし今後電池のエネルギー密度が高く小型軽量な電池の可能性がないわけではない。

 2)集電式電気自動車
集電式にはトロリーバス方式と誘導方式があるが、閉鎖されたトンネルを運転手が手動で運転するのも困難であり、自動化する場合、トンネルの照明や信号などの配列、衝突防止、右側通行から左側通行への転換などいろいろな問題を考慮しなければならない。

 3)軌道方式には電気鉄道が考えられるが、20~30Km間隔で変電所を設置し電力を供給しなければならない。このとき韓国と日本の列車の幅の違いがあることで停留場のプラットホームと車両の間隔についても配慮しなければならないであろう。

 4)鉄道による自動車輸送

 5)モノレールで走るもの

 6)磁気浮上式

 7)ベルト式とパレット式などがあるが、速度を速くできないという点と、輸送手段としては不適合だという問題などがある。

 浮上式リニアモーターカーは、時速500Km相当の輸送速度を持つため30分間で韓国と日本を往来できるようになる。しかしこの方式はここにだけで使用し、ほかの場所ではされないためトンネル内の孤立したシステムになる。交通経済学の観点から交通投資が果たして経済的に事業化されるか否かを計算すれば、その運賃だけでは回収することは困難である。しかし交通施設としてだけで考えることはできず、東北アジア経済共同体の経済のみならず、平和の構造を築いてゆくうえに、より大きな意義があると言える。

来たる11月、韓日トンネルについての国際会議を計画
 来たる11月、日本で第23回世界平和に関する国際会議(I.C.W.P)および第3回東北アジアの国際ハイウェイ計画に関する韓日中協議会が開催される予定である。I.C.W.P は去る1974年、ソウルで初めて開催されて以来今年で23回になる集まりで、今度の会議は全体を4つの分科会に分けて開催する予定だ。
 第1分科会は政治と安全保障、第2分科会は経済・科学・技術、第3分科会は価値観とビジョン、第4分解は交通・運送とに分かれて発表がもたれる予定である。韓日トンネルについては第4分科会の集まりで扱われる見込みだ。第4分科会の発表内容は“21世紀の新国際輸送システムの展望”、“国際ハイウェイ構想の役割”、 “中国東北地方の交通網整備と豆満江開発の可能性”、“青函からヨーロッパそして韓日トンネルの建設”、韓国内の道路網整備と南北統一後の交通、輸送の将来”“国連のアジアハイウェイの現状と展望”などであり、朴明燮教授(釜山水産大学貿易学科)が発表する予定である。


訳責:特定非営利活動法人 日韓トンネル研究会事務局

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